ごあいさつ

 

教育の6角形を活かすための学生生活の6角形

2020年度学域長・学科長 鳥海基樹

このサイトの来訪者の大半は、弊学科の受験を考えている高校生の皆さんと推断します。したがって、このご挨拶も、将来の若き学友に向けたものとお考え下さい。

弊学科のセールス・ポイントはこのサイトの別のページに示す通りです。ベビー・ブーム世代でブロイラーのように育てられたわたくしから見ると、垂涎の勉強の基盤が整備されています。

しかし、それを活用するのも無駄にするのも学生次第です。大学は、自ら助くる者は助くが、そうではないものは放置する優勝劣敗の非情な社会なので、4年後には、この温床を利用した学生とそうではない人間との差は、至って大きなものになります。

そこで、わたくしは以下の「学生生活の6角形」を提案します(わたくし個人の提案で、教員全員のそれではありません)。


教養を深めよう・・・建築や都市計画は究極的には利害の調整技術です。例えば、ある道路は利用者には利便性を提供しますが、関係する土地の所有者や住民は移転を強いられたり騒音や振動を被ります。どちらが正しいとは言えません。双方の妥協点を探るためには、建築・都市計画の技術に加え、哲学や倫理学、広くは教養が必要になります。

基礎を固めよう・・・弊学科の講義は基礎・応用・発展の3段階で構成されており、最終的には最先端技術を学べる制度設計になっています。しかし、巷間言われるように、先端技術は3年もすれば陳腐化します。それに負けずに絶えず先鋭的な方策を産み出すためには、基礎を固めることが不可欠です。教養はある意味、人生の基礎学問とも言えます。

学外に飛び出そう・・・建築や都市計画は雑学の学問とも言われます。わたくしはワインスケープの研究をしていますが、ワインに関わる建築や都市計画を研究するためには、醸造方法や料理も知らなければなりません。それを助けてくれるのが朋友です。建築学科を越え、都立大を飛び出し、建築を外れて広くさまざまな人々と協働する心意気が身を助けます。

現場に出よう・・・スマートフォンでも情報を得られますが、大きさ等の具体的感覚は磨けません。また、人間は体験した空間しか頭の中に再現できません。香りや音、肌触り、さらには味ともなると、その場に赴かなければ解りません。そこで、現場に出て様々な空間を経験することが、建築家・都市計画家の必須条件になります。

新聞を読もう・・・建築にせよ都市計画にせよ、社会との関わりなしに成立することはありません。その意味で新聞を読みましょう。世界で起きていることを、ネット版ではなく紙版で、日々ざっと見渡してみて下さい。現実の不条理に義憤を覚知し、その中でも光る人倫に感動して、建築は、都市は、そして社会は如何にあるべきか、わたくしたちと青臭く論じてみませんか。

コミュニケーション技術を磨こう・・・設計の上手な学生に対し「あいつは絵が上手いだけ」と僻む学生がいます。違います。デザイン巧者はコミュニケーション巧者でもあるのです。SNSで使う刹那的単語ではなく専門的で説得力のある文章で語る一方、海外で言葉の通じない環境では図面だけが勝負ですから、デッサンだけでも語り尽せる表現技術を磨いて下さい。


それでは、本年度から都立大に名称を戻し、来年キャンパス移転で30周年を迎える南大沢丘陵で、皆さんをお待ちしています。