ごあいさつ

『新しいこと』を見つけよう!

2021年度建築学域長・建築学科長 角田 誠


 「新しい生活様式」なるものが謳われてから、既に1年が経過しようとしています。マスク着用、うがい・手洗いの励行、不要な外出を避けるなど、今まで意識的ではなかったことをベースとして、そこから生活のスタイルを変えていったとするならば、本当に生活そのものが新しくなったのか、些か疑問を感じます。テレワークにより従来のような満員電車による通勤・通学から解放され、また無駄な残業時間も削減され自分の時間を見つけることが可能になったなど、確かに良いことも多く見受けられます。あれほど騒がれていた働き方改革が1年の間にぐっと進んだと実感せざるを得ません。

 しかし、テレワーク、在宅勤務などは1990年代後半からずっと言われ続けていたことであって、新しいことでも何でもありません。SOHO(Small Office Home Office)という言葉も、既に使い古されたものです。それが、今ここに来て急速に拡がっている事実は、何かのきっかけにより、世の中全体の仕組み自体がドラスティックに変化する様を如実に表しています。特別に新しいことを見つけ出そうということでもなく、置かれた状況に応じた結果としての必然と捉えることもできます。人間の持つ知恵と行っては大袈裟ですが、前に進み続ける我々にとって欠かすことのできない行動規範と言えるかもしれません。

  「新しい」と考えられることは、未知から生まれるものではなく既知の事実の応用に基づいて生まれるものです。皆さんが高校までで学んでいることは、皆さんにとっては「新しい」知識の吸収ですが、その知識が何か「新しい」ことに直接繋がるわけではありません。身につけた知識を最大限に活用することで、初めて「新しい」ものが生まれてきます。知識は多ければ多いほど武器となりますが、使用方法・活用方法を知らなければその威力は発揮できません。今まで身につけた知識がどのように使われてきたのかを探求することで、「新しい」方法を見出すことが可能となります。今までは知識の積み重ねで解を見つけてきたわけですが、これからは知識の使い方を知り「新しい」解法を探すことを目指してください。単に知識を教わるのではなく、その知識を如何に使って「新しい」知識を生み出すのか。これが応用の術を修得するという、本来の大学での学びの目的なのです。

 皆さんには東京都立大学の建築学科で数多くの知識を学んで欲しいと思います。我々教員陣には、建築構造、建築環境設備、建築計画・都市計画、歴史・意匠、材料・構法・生産と幅広い人材が揃っており、各分野において様々な研究成果をあげております。加えて、それらの技術の総体として建築設計分野で活躍している建築家もおります。総合的な学問分野である建築学について、満遍なく教授できるスタッフを有していることが本学の特徴であり最大の強みです。そして、この教員陣から未知の知識を教わるだけではなく、「新しい」知識を生み出す術を共に見出していきましょう。

  何気なく過ごしている日常を改めて見つめ直し、今まで想定もしていなかった事象に対して善後策を持っておくためには、今までを疑う、気づきが必要です。その気づきを得るために、常に思考を巡らすことが重要です。「新しいこと」を見つけるために、一緒に学んでいきましょう。